「朝たんぱく協会」設立発表会を開催
2025年9月3日(水)、「朝たんぱく協会」の発足にあたり、設立発表会を開催しました。「朝たんぱく協会」にご参画いただいている、跡見学園女子大学の石渡尚子教授、立命館大学の藤田聡教授、広島大学の田原優准教授にご登壇いただき、第1部では特別ゲストをお招きしたトークセッション、第2部ではセミナー形式のプレゼンテーションを実施。本記事では、当日の模様と各先生のプレゼンテーションを動画でご紹介します。
この記事は、「朝たんぱく協会」設立発表会の様子をまとめたものです。設立の背景や朝たんぱくの重要性などを、ご参画いただいている先生方のプレゼンテーション内容とともにご紹介しています。
第1部「朝たんぱく協会」設立発表会

「朝たんぱく協会」設立の背景・趣旨
冒頭では、「朝たんぱく協会」の賛助企業を代表し、キッコーマンソイフーズ株式会社マーケティング本部マーケティング推進部長の亀井淳一氏が、協会設立の背景を説明しました。豆乳を通じてたんぱく質摂取の重要性を訴えてきた同社は、「朝にたんぱく質が不足していることは社会課題である」という認識のもと、協会設立を推進。「朝たんぱく協会」の活動を通じて、エビデンスに基づいた情報発信を積極的に行うことを表明しました。
「朝たんぱく」の重要性と調査結果の発表
広島大学で時間栄養学を研究している田原優准教授より、朝にたんぱく質を摂取することの重要性をお話しいただきました。まずは、たんぱく質に関する基礎知識として、たんぱく質が、筋肉をはじめとして髪の毛や爪、内臓や骨など体を構成する重要な要素であるだけでなく、血液の循環やホルモンの分泌といった生理機能の調整にも必要不可欠であると解説。さらに、たんぱく質は、あらゆる年代にとって大切な栄養素であり、特に高齢者においては、フレイルやサルコペニアの予防、健康寿命の延伸に重要であると解説いただきました。
日本人のたんぱく質摂取は夕食に偏り、朝食では不足する傾向にありますが、筋肉合成のためには、たんぱく質を毎食20g、1日3回に分けてバランスよく摂取することが推奨されます。朝食でたんぱく質を摂ることで、筋肉量の維持や満腹感の向上、食欲の抑制や体内時計の調整、体温上昇や代謝促進などの効果も期待できます。
「朝たんぱく協会」が実施した調査では、朝のたんぱく質摂取を意識している人は約半数である一方、実践できている人は非常に少ないことが明らかになりました。また、たんぱく質を3食に分けて摂る重要性やその効果についても、あまり認知されていないという実態も浮き彫りになりました。普段の朝食に卵や納豆などを追加するなど、手軽な方法でたんぱく質の摂取量は増やすことができます。田原准教授からも、「はじめよう、朝たんぱく習慣」の合言葉とともに、その普及を呼びかけていただきました。
特別ゲストによるトークセッションを実施
特別ゲストとして、タレントの若槻千夏さん、お笑いコンビ・品川庄司の庄司智春さんにもご登壇いただき、「朝たんぱく」の重要性に関するトークセッションを行いました。実態調査では「朝食を食べる人は約7割」という結果が出ましたが、若槻さんは納豆卵かけご飯、庄司さんは鶏胸肉やマグロなどを食べているなど、目標とする数値まではいかないものの、朝食でのたんぱく質摂取はできている様子。石渡教授は、たんぱく質は植物性と動物性のバランスが重要であると解説し、目標としている毎食20g以上の摂取を達成するためには、納豆にちりめんじゃこを追加したり、豆乳を飲んだりするなどの「チョイ足し」をお勧めいただきました。
藤田教授は、筋肉維持のために朝食でのたんぱく質摂取が重要であり、基礎代謝の向上や太りにくい体づくり、集中力の維持にもつながると解説。若槻さんからは、「特に女性はきれいになりたいという思いからたんぱく質を摂取していると思う。普段の生活でもたんぱく質の重要性を感じる」とコメントをいただきました。田原准教授は、「朝たんぱく」が体内時計の維持や体温の上昇、交感神経の活性化に役立つと説明。たんぱく質は一度にまとめて摂るのではなく、毎食均等に摂取することを推奨されると、庄司さんからは「毎食均等に摂取するという意識はなかった」と驚きの声が上がりました。
第2部 「朝たんぱく」セミナー

第2部では、「朝たんぱく協会」に参画いただいている藤田教授、田原准教授、石渡教授によるセミナーを実施。それぞれの専門的な視点から、朝にたんぱく質を摂ることの重要性や、そのエビデンスについてお話しいただきました。
立命館大学 藤田聡教授(専門:運動生理・生化学)
「朝にたんぱく質を摂取することと筋肉の関係性」
運動生理・生化学を専門とする藤田教授より、「筋肉と朝たんぱくの関係」をテーマに、筋肉量の低下が疾患リスクを高めること、食事によるたんぱく質摂取と筋肉量の関係、そして運動による筋肥大とたんぱく質摂取の重要性について解説いただきました。
筋肉量は、加齢とともに低下する傾向にあり、中高年以上になると糖尿病や心疾患などの発症リスクが上がる要因にもなります。筋肉量を維持・増加させることで、死亡リスクを低下させるだけでなく、基礎代謝の向上につながり、美容や健康維持にも寄与します。
たんぱく質は、筋肉を維持するのに不可欠な栄養素です。高齢者を対象とした研究では、たんぱく質の摂取量が多いほど、筋肉量の減少が抑制されることが研究で示されています。たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されていますが、筋肉を作る上では特に必須アミノ酸が重要です。中でも必須アミノ酸の中でもロイシンは、筋合成のスイッチとなるmTOR(エムトール)を強く活性化する働きがあります。そして、筋肉を積極的に増やすには運動が欠かせません。筋トレはmTORを刺激し、たんぱく質の合成を促進しますが、その効果をより引き出すためには、特に朝食でのたんぱく質摂取が重要になります。
藤田教授は、「筋肉維持は生活習慣病予防に、そして筋肉量の維持には筋トレと食事からのたんぱく質摂取が重要」と締めくくり、「朝たんぱく」を意識した健康な体づくりを呼びかけました。
広島大学 田原優准教授(専門:時間栄養学)
「時間栄養学から見た朝のたんぱく質の重要性」
時間栄養学を提唱する田原准教授のプレゼンテーションでは、食事のタイミングを重視する時間栄養学と体内時計の観点から、朝食におけるたんぱく質の重要性を解説いただきました。
「時間栄養学」は、「何を」「どれくらい」食べるか、というこれまでの栄養学に「いつ」というタイミングを加えた、「体内時計を考慮に入れた新しい栄養学」の考え方です。体内時計の乱れは、糖尿病や肥満、鬱、睡眠障害、癌などの発症リスクに大きく影響すると言われています。
体内時計の乱れをリセットするには、朝日を浴びて、決められた時間に朝食を食べることが効果的です。特に、たんぱく質に含まれる「IGF-1」というホルモンには、体内時計を調整する効果があり、朝食をしっかり食べることで、朝から頭もよく働き、仕事や勉強の効率もアップします。また、朝食を食べないことで、食後に血糖値が急激に上昇する「血糖値スパイク」が起きやすくなり、糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞といった疾患も発症しやすくなってしまいます。朝型の生活を心がけ、しっかり朝食を摂ることが重要です。
朝にたんぱく質を十分に摂取できると、加齢や運動不足、栄養不良などにより筋力低下を招くサルコペニアの予防にもつながります。田原准教授は、アプリをはじめとしたヘルステックの技術を積極的に活用することを推奨し、「まずは自分のたんぱく質の摂取量を知ることから始めてほしい」と呼びかけました。
跡見学園女子大学 石渡尚子教授(専門:栄養・食物学)
「健康を支える食習慣としての朝たんぱく」
石渡尚子教授からは、「健康を支える食習慣としての朝たんぱく」と題し、栄養・食物学の観点から「朝たんぱく」の重要性を解説していただきました。
人間の体内には約10万種類ものたんぱく質が存在します。たんぱく質は、体内で合成できる非必須アミノ酸と、食事から摂取する必要のある必須アミノ酸から成り、体を構成するだけでなく、エネルギー生成をはじめとする代謝全体の維持に不可欠な成分です。食品に含まれる必須アミノ酸のバランスは「アミノ酸スコア」で評価されます。例えば、牛乳や卵、肉・魚類はアミノ酸スコアが100とされ、必須アミノ酸をバランス良く含みますが、白米や食パンは100に及ばないため、食材を組み合わせて必須アミノ酸のバランスを維持することが重要です。
朝食にたんぱく質を摂ることは、食事による体熱産生を促進し、体温の上昇にもつながります。体温が上がると血流が改善され、エネルギー産生が活発になります。これは、1日を元気にスタートさせるために非常に重要です。
朝食で不足しがちなたんぱく質を手軽に補うためには、アミノ酸スコアの高い豆乳や牛乳、粉チーズや鮭フレーク、きな粉などを添える「チョイ足し」が有効です。たんぱく質を摂取する際は、動物性と植物性を1:1の割合で摂ることも推奨されます。動物性たんぱく質は栄養価が高い反面、動脈硬化や心筋梗塞の原因となる脂質も多く含むため、植物性たんぱく質もうまく取り入れることが大切です。
「朝たんぱく」を意識することは、体調改善だけでなく、自己管理ができているという自信につながります。石渡先生は「健康的な生活習慣へのモチベーションを高めるきっかけとして、朝たんぱくを意識してほしい」と締めくくり、プレゼンテーションを終えました。
今回の「朝たんぱく協会」設立発表会は、朝たんぱくの重要性や健康的な食習慣の大切さを広く伝える一つのきっかけになったと考えています。「朝たんぱく協会」では今後も、朝食におけるたんぱく質摂取の大切さについて、積極的に情報発信を続けてまいります。