
朝たんぱく協会が実施した「朝のたんぱく質摂取に関する意識調査」では、朝にたんぱく質をきちんと摂取できている人は、朝食をとっている人の1割に満たないという結果が出ました。取り組めている人はまだまだ少ない朝たんぱく習慣ですが、これこそが私たちの健康を支える鍵になります。この記事では、たんぱく質の基本的な役割から、「朝」にたんぱく質を摂るべき理由、期待される健康効果までを解説します。
この記事は、たんぱく質が体の構成や健康維持に不可欠な栄養素であり、特に「朝」に摂ることの重要性を解説しています。朝のたんぱく質摂取は、体型の維持や肥満予防、年齢を重ねての健康維持、体内時計を整えること、体を温めることなど多くの健康効果が期待できます。しかし日本人は朝食での摂取量が不足気味で、意識的な習慣化が求められています。卵や豆乳、ヨーグルトなど手軽な食材を1品追加して「朝たんぱく習慣」を日常に取り入れることが健康習慣への第一歩になります。
体のあらゆる働きを支える、たんぱく質の役割
たんぱく質は、筋力トレーニングを行う人が積極的に摂取するものと考えられがちですが、人の体を構成する三大栄養素のひとつであり、最も基本的な栄養素です。たんぱく質は体内でどのような役割を果たしているのでしょうか。
まず、体を作る材料になっています。筋肉だけでなく、臓器、骨、皮膚、髪、血液など体の組織の多くがたんぱく質から構成されています。また、体の健康維持や生命活動に欠かせないホルモンや酵素、抗体なども主にたんぱく質からできています。さらに炭水化物や脂質と同じくエネルギー源にもなり、エネルギーが不足したときには、筋肉や臓器を分解してエネルギーを作り出すこともあります。
このように、たんぱく質は体を構成するだけでなく、生命や健康の維持、美容や睡眠など、体のさまざまな機能を支える重要な栄養素です。
体のなかでのたんぱく質の役割

今、朝のたんぱく質摂取量が足りていない
たんぱく質は体のあらゆる働きを支える重要な栄養素ですが、1人1日あたりのたんぱく質の摂取量は、1995年をピークに減少傾向にあります。
特に問題なのが、「朝」のたんぱく質不足です。たんぱく質は毎食20g以上摂ることがひとつの目安とされています。しかし、約5.4g足りていないことが分かっています。
各食事におけるたんぱく質量

たんぱく質は「摂りだめができない栄養素」
あまり知られていませんが、たんぱく質は「摂りだめができない栄養素」です。そのため、夕食で1日分のたんぱく質をまとめて摂取しても、体内で利用しきれなかった分は代謝・排出されてしまいます。1日の必要量を朝・昼・夕の3食に分けてバランスよく摂取することが効率的なたんぱく質の利用につながります。
朝にたんぱく質を摂ることで期待される健康効果
摂りだめができない一方、朝にたんぱく質を積極的に摂取したり、朝・昼・夕の3食に分けてバランスよく摂取したりすることで、さまざまな健康効果が期待されます。

体型の維持・肥満予防
朝食を食べないと骨格筋量が少ない、朝に多くたんぱく質を食べていると骨格筋量が多い、といった研究結果が存在します。筋肉量が減少すると基礎代謝が低下し、太りやすくなるリスクが高まります。体形の維持や肥満の予防には、朝のたんぱく質摂取が重要なのです。

フレイル・サルコペニアを予防する
高齢者では、加齢に伴う筋肉量の減少が、筋力や身体機能が低下する「サルコペニア」や心身の活力が低下する「フレイル」といった状態につながります。朝のたんぱく質摂取で、筋肉量を増加ないし、少なくとも維持することを通したフレイル・サルコペニアの予防が重要です。

体内時計を整える
朝のたんぱく質摂取は、体内時計を整えることにも重要な役割を果たします。体内時計の調整は、生活習慣病の予防などにつながるだけでなく、勉強などの午前中におけるパフォーマンスアップなど、日常生活のさまざまな場面に良い影響を及ぼします。

体を温める
たんぱく質はDIT(食事誘発性熱産生)が高いので、糖質や脂質に比べ、エネルギーに変換されるときにより多くの熱を発生します。1日のうちでもっとも体温の低い朝にたんぱく質を摂ることで、体温が上昇しやすく、冷え対策にもなるのです。
普段の朝食に+1品して、たんぱく質摂取量20g以上を目指す
普段の朝食でたんぱく質の摂取量が足りないと説明しましたが、それはどのようなメニューでしょうか。定番的な食材で考えてみましょう。具材によってたんぱく質量は変わるのでおよその数字になりますが、例えば和食のメニューの場合、ごはん(3.8g)、味噌汁(3g)、玉子焼き(6g)、ほうれん草のおひたし(1.3g)で合計14.1g。洋食のメニューの場合、食パン(5.3g)、目玉焼き(6g)、野菜のサラダ(1.5g)、コーヒー(0.3g)で、合計13.1gになります。
かなりの品数を食べないと、20gに届かないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。日本人の全体でみると約5.4g足りていないことからも、いつもの朝食にプラス一品ほど、良質なたんぱく質を摂取できる食品や飲み物を足すことがおすすめです。
定番食材で作られた
朝食で摂取できるたんぱく質の量
和食 | |
---|---|
ごはん(茶碗1杯) | 3.8g |
味噌汁 | 3g |
玉子焼き | 6g |
ほうれん草のおひたし | 1.3g |
合計 | 14.1g |
洋食 | |
---|---|
食パン(1枚) | 5.3g |
目玉焼き | 6g |
野菜サラダ | 1.5g |
コーヒー | 0.3g |
合計 | 13.1g |
※上記はおよその数字です。具材や各食材の使用量によってたんぱく質量は変わります。
また、そもそも朝食をとっていない人は、牛乳や豆乳、ヨーグルトなど、取り入れやすい食品を食べることからはじめ、徐々に固形物へ移行することで、朝食を通してたんぱく質を摂る習慣作りを始めてみてはいかがでしょうか。
専門家も推奨する朝たんぱく
朝たんぱく協会は、「朝にたんぱく質を積極的に摂取すること」が健康や生活に与える影響について、研究者・医師・企業などと意見交換や調査・研究を行うことを目的とした団体です。これらの成果を社会に発信し、人々の健康寿命やQOL(生活の質)、Well-beingの向上に貢献することを目指して発足しました。
この趣旨に賛同いただいた専門家の方たちの協力を得て、各研究分野の視点で朝たんぱくの重要性を紹介しています。
朝たんぱくで、今日から健康習慣を
健康的な体を維持し、生活の質を高めるためには、たんぱく質を朝・昼・夕とバランスよく摂取することが大切です。特に朝は、体型の維持や肥満予防、年齢を重ねての健康維持、体内時計を整えること、体を温めるといったさまざまな面で最も重要なタイミングです。意識してたんぱく質を摂ることで、日々の体調にも良い変化があらわれます。
ヨーグルト、卵、納豆、チーズ、豆乳など、朝の食卓に取り入れやすいたんぱく源は多くあります。まずは普段の朝食に一品プラスするところから始めてみてはいかがでしょうか? 「朝たんぱく」を習慣にすることが、未来の健康につながる第一歩になるはずです。
<参考>
国民栄養の現状(独立行政法人国立健康・栄養研究所HP)
国民健康・栄養調査(厚生労働省HP)
食品成分データベース(文部科学省HP)
Current protein and amino acid intakes among Japanese people: Analysis of the 2012 National Health and Nutrition Survey(National Center for Biotechnology Information)